【news】クルーズ船の乗組員が下船し、帰国できない理由

クルーズ船乗組員が下船し帰国できない理由

米国沿岸警備隊によると、2020年5月5日の時点で米国の港、バハマ、カリブ海周辺に74隻のクルーズ船が停泊しており、その船内には57,000人を超える乗組員がいました。さらに、世界中の洋上にはさらに多くの乗組員がいます。
乗客がすべて下船し、検疫も完了しているのに乗組員はなぜ家に帰ることができなかったのでしょうか。

乗務員の下船はCDCの承認が不可欠

新型コロナウイルスの影響を受けないクルーズ船の乗組員は下船し移動することができますが、事前にCDC(米国疾病予防管理センター)の承認を得た場合に限られており、クルーズ会社は「新型コロナウイルス(covid-19)がない船の状態を証明する」という記述にサインする必要があります。
クルーズ船への警戒心、CDCのポリシーの詳細と影響、エアラインの運航欠如や広範囲にわたる旅行の禁止などが、乗船中の乗組員の下船を困難にしています。

ロイヤルカリビアンの運航船、フリーダム・オブ・ザ・シーズの乗船客がマイアミで下船した3月中旬以来、バルバドス沖合で停泊していました。
同船のアメリカ人男性の乗組員は「最初の1週間、乗組員は船内のプールやジムを利用して、乗船客のいない施設を楽しんでいました。その後、2週間の自己隔離に入りました。乗組員の給与は4月末に支払われ、それ以降は無給となった。」とCNNの取材に答えています。
ロイヤルカリビアンは乗組員の帰宅への支援、チャーター機の手配は試みたが前に進まずCDCの条件をクリアできない困難な状況でしたが最終的に合意しました。

世界のクルーズ会社の過半数が所属しているクルーズライン国際協会(CLIA)はCNNに「新型コロナウイルスによる前例のない事態に対処し、乗組員をできるだけ早く帰国させるためにCDCと協力している。」と話しています。

トランスシッピングで帰国、空港へ

プリンセスクルーズで5年間働いているアメリカ人乗組員モートンは、今年初めに4回目の雇用契約をプリンセスクルーズと交わしたばかりでした。スカイ・プリンセスに乗船し、カリブ海、大西洋を越えてバルト海を航行、ヨーロッパを縦断する10月中旬まで続くクルーズで働くことになっていました。

新型コロナウイルスにより感染が世界的に広まったことにより、クルーズがキャンセルされスカイ・プリンセスは3月14日にマイアミ で全乗船客を下船させ、スカイ・プリンセスはマイアミに停泊したまま、モートンを含む乗組員はそのまま船内に留ることになり、乗務員たちは約20日間の自主隔離に入りました。
モートンは「新型コロナウイルスの感染症状などの兆候がなかったので安全を感じていた。その時点ではまだ給料が支払われ雇用されていた。しかし、この自主隔離期間が終わりに向かう頃、モートンや彼の同僚の雇用契約が正規式に終了することを告げられました。6月以降、給与は支払われないことになりました。」

スカイ・プリンセスは4月に検疫が終了し、その後乗組員を国籍ごとにグループ化しクルーズ船間で乗組員を移動させ、彼らが直接自宅へ、または帰国に至便な空港に航海できるようにしました。飛行機の欠便への対処策であり、CDCがチャーター機を承認することの難しさでもあります。ただし、航海数週間かかることがあり、フライトには数時間がかかります。

アメリカ人の乗組員にとってはこのようなトランスシッピングはほとんど意味がありません。スカイ・プリンセスはマイアミに停泊していたのにどうして下船できなかったのでしょうか。スカイ・プリンセスは新型コロナウイルスの症例は報告されていませんでした。モートンは乗客または乗組員が以前に陽性反応を示した船に移動するのではないかと懸念していました。

スムーズにいかない乗組員の下船、帰国

プリンセスクルーズは「乗組員の下船を処理するのになぜこんなにも時間がかかるのか、またアメリカの港に係留されているアメリカ人の乗組いが出港するまで現場に留まるのではなく、船積みに関与したのか。」という理由についての質問には回答しませんでした。同社のスポークスマンはCNNに対し、「船のチームメンバーとその家族を安全に再会させ母国への帰国の手配を進めていくことに専念している。」と述べています。

また「CDCの方針に従って乗務員の下船準備を積極的に準備、提供しており、CDCの方針は、乗務員にホテルに宿泊したり、公共交通機関を利用したり、空港ターミナルに立ち入ってはならないとされている。」とも語った。

感染者ではないのに差別を受けている

先のプリンセスクルーズと雇用契約をしたアメリカ人男性モートンは「乗組員達は犯罪を犯していないのに犯罪者のように扱われており、自国が立入拒否をしているように感じています。1ヶ月以上も健康状態をチェックし異常も見つかっていません。」と話している。

(ニュース元:CNN Travel2020.5.7)

ダイヤモンド・プリンセスの新型コロナウイルスによる船内集団感染に続き、他のクルーズ船でも船内で同様なことが起こり、発症者がいないクルーズ船でも相当警戒されてしまっているのがわかります。前例のない感染力のと強いウイルスであること、感染者発生後の対処などがはっきりしていないことから対応の遅れのしわ寄せが乗組員さん達にきてしまっている状況です。1日も早く下船し、自国、自宅へ帰れるよう願っています。

 

 

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