【news】クルーズ船内で集団感染が起きた場合の責任はどこに?日本主導でルール作りを目指す

ダイヤモンド・プリンセス船内集団感染の責任はどこに

2020年2月ダイヤモンド・プリンセスの船内で集団感染が発生し、日本政府は、ダイヤモンド・プリンセスを横浜港大黒ふ頭に停泊させ、船内で隔離を行った。国際法による処置すべき国、責任のある国はどこなのか注目が集まった。

既存した外航船の運航ルール

国際法の概念が生まれる前から「外交船の運航ルール」は存在しており、そのルールを時代修正し国際海洋法として成文化したようなものである。
現在の海洋法は旗国主義となっており、旗国=船籍国が国家主権を行使することができるが、税制優遇措置のある国や規制の緩やかな国に船籍を置く外航船が多く、約18%はパナマ船籍、約11%は西アフリカのリベリア船籍、海に面していないモンゴル船籍も存在している。(※クルーズ船、帆船の船籍で一多い国は、バハマ、マルタ、パナマ、イタリア、オランダ、イギリス、ノルウェー、フランス、マーシャル諸島など)

ダイヤモンド・プリンセスの船籍はイギリスであり、運用者は日本企業のカーニバルクルーズジャパン社だが、同社はアメリカのプリンセス・クルーズ社の日本支社となっており実質的にアメリカ企業が運航している。

ダイヤモンド・プリンセスの場合

◉検疫許可を得るための船内環境整備の責任
→旗国イギリス
→運航会社プリンセス・クルーズ社
→ダイヤモンド・プリンセス船長
◉自国が有する輸送機関内の感染に侵されない義務
(国際保健機関憲章に基づく国際保健規則)
→旗国イギリス
◉船内のさまざまな権限
→プリンセス・クルーズ社から委託された船長

今回のダイヤモンド・プリンセスでの集団感染について旗国であるイギリス政府からの発言はなかった。

プリンセスクルーズの責任

「船舶が乗客および乗組員に安全な環境を提供するような形で運用可能であることを確認する責任は船舶運用者にある」。また、「船長は、乗組員および乗客の健康を守るためにすべての合理的な措置を確認しければならない」と、運用者および船長の衛生環境に対する責務が規定されている。さらに感染症に関し、SARSや新型インフルエンザなどへの警戒から、船内で採るべきアウトブレイクへの対処策が細かく示されている。(国際保健機関(WHO)の船舶衛生ガイドライン)

1月25日に香港で下船した乗客が新型コロナウイルスに感染したことをダイヤモンド・プリンセスでは2月1日に知っていたが、その後すぐに隔離など行われなかったことから、感染者の多くは2月2日〜4日に感染したと推定されている。
プリンセス・クルーズ社は、運用者の責任として全乗客に対し旅行代金の払い戻し、その他かかった費用の支払いに応じている。

寄港国「日本」の責任は?

日本政府に対するダイヤモンド・プリンセスへの対応の批判的な報道もあったが、国際法において寄港国の責務は検査や設備の不具合への対処に関する事項であり、今回の対処は人道的支援処置であったと考えられる。
ダイヤモンド・プリンセスでの船内集団感染に関して、海洋問題を専門とするアンドリュー・リー弁護士によると、「同船は新型コロナウイルスの感染が発覚(船側でも認識)2月1日時点で那覇に寄港していたことから、日本政府が対応しなければ人道上の批判を受けるのは免れなかっただろう。」とし、イギリスに法的責任があった可能性は低いと述べた。
その一方で東京理科大の平塚教授(危機管理)は「ダイヤモンド・プリンセスは渡航中にすでに感染していた可能性がある」とし旗国主義を鑑みて船籍国のイギリスが感染の防止を行うべきだったのでは」と述べた。

いずれにしても現在の国際法において、クルーズ船内で集団感染が起きた場合の規定がない。日本政府は日本が主導し新たなルール作りを目指す方針としている。

(ニュース元:FNN PRIME ON LINE2020.5.7,Sankei Biz2020.3.2)

【参考】

・国土交通省(2007.7)『国際海自条約における外国船舶に対する管轄権枠組の変遷に関する研究』
・2020年3月10日第201回国会においての質問と答弁内容
質問書:クルーズ船に対する国際法上の管轄権と「日本関係船舶」の該当性に関する質問主意書
答弁書:参議院議員白眞勲君提出クルーズ船に対する国際法上の管轄権と「日本関係船舶」の該当性に関する質問に対する答弁書

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