【news】行き先を失ったクルーズ船がマニラ湾になぜ集まるのか|乗員が帰国できない理由
クルーズ船が集まるフィリピン・マニラ湾
新型コロナウイルスの集団感染が2月に発生したダイヤモンド・プリンセスが5月16日に横浜港を出港し、東南アジア出身の乗員らを帰国させるためマレーシアへと向かった。
3〜4割を占めるフィリピン国籍乗員
フィリピンのマニラ湾には現在、クルーズ船が20隻以上が停泊しており、船内には総勢5,300人以上のフィリピン人乗組員が乗船したまま新型コロナウイルス制限措置の隔離期間が終了するのを待っている。フィリピンに戻ってきた乗員の隔離期間は14日間で、これまで感染が疑われるケースは報告されていない。
5,000件近い新型コロナウイルス検査をするためにクルーズ船間を行き交うフィリピンの沿岸警備隊によると、今後もフィリピンにやってくるクルーズ船は増加する見込みだという。
フィリピン国際海事協会は「クルーズ船が大挙としてマニラ沖にいることに特に驚きがない。」とし「クルーズ船の1席につき乗員の3〜4割がフィリピン国籍で、マニラ湾に客船が集結するのは合理的だ。ここで待てば船の所有社はかなりのコストが抑えられる。」と語った。
すぐ近くに帰る家がありながら、船内で過ごすことを余儀なくされているフィリピン国籍の乗員たちは、「退屈で寂しさ」を感じているが、他の場所で隔離期間を過ごすフィリピン人帰国者が過酷な環境に置かれていることを知っているので、船内のスィートルームなどで快適な部屋で過ごせていることを幸運に思っているという。また「船内にいる方が安全だと感じている。清潔さと衛生においてはクルーズ船の基準は高い」とも語った。
多国籍の乗員、国によって異なる帰国規制が阻む
5月上旬現在、378隻のクルーズ船の多くはカリブ海、地中海、大西洋、南シナ海に集団で停泊していた。
米疾病対策センター(CDC)の勧告によりアメリカでは7月24日までのクルーズ船の運航が禁止されており、これにより米国沿岸には乗員が乗ったままのクルーズ船が複数停泊している。
CDCは一定の条件を満たしたことを明記する書面に運航会社が署名すれば、症状が見れられない乗員の下船を許可しているが、下船後、乗員は公共交通機関を使うことなく自宅もしくは次の勤務地まで送り届けることが条件となっている。また帰国先の国ごとによって規制が様々であることから帰国を困難なものとしている。
ハイチやフィリピンの場合、帰国前にPCR検査を受けることが義務付けられており、カリブ海のグレナダなどは帰国後、検疫機関の滞在費用を運航会社に求めている。
米・マイアミヘラルド紙によると、フロリダ州マイアミに本社を置くカーニバル・コーポレーションが帰還させた乗員はわずか4割弱に過ぎず、同州のディズニー・クルーズ・ラインも3割にどどまっている。
その一方で、スイス・ジュネーブにあるMSCクルーズは8割近くの乗員を帰国させた。「フロリダ周辺に停泊している船の運航会社は国ごとに規制が違い、また高額なチャーター機での帰還を避けており、カリブ海域の空港が再開されるのを待って乗員を帰国させたい考えだ」と関係者の話として同紙は報じている。
(情報元:東スポweb,Newsweek2020.5.19 )