【2018クルーズポートセミナー参加記2】各港クルーズ船誘致・地元活性化への取り組み|参加感想
先月2日に渡って行われたクルーズポート・セミナーに参加しました。
関連記事:2018クルーズポート・セミナー参加リポート(1)クルーズ船受け入れの現状と課題
総トン数と排水量の違い
クルーズ船の「大・小」を示す目安として用いられる『総トン数』というのはクルーズ船の「容積」つまり「船の大きさ」を示しています。
『トン数』という単位が付いているので『重量』だと思われがち(メディアでもそう報道している場合も)ですが実は違います。一方『排水量』は重量を示しています。私もセミナーに参加する直前に正確に知ったのですが混同しがちですよね。
・総トン数=船の大きさ
・排水量=船の重量
<比較例>
・オアシス・オブ・ザ・シーズ
全長362m/総トン数22.5万トン/排水量10.4万トン
・クィーン・メリー2
全長344m/総トン数15万トン/排水量8万トン
(参照:クルーズポート読本/一般財団法人みなと総合研究財団クルーズ総合研究所監修)
セミナーではこの『総トン数』に関して想像しやすいお話がありました。
100立方フィート(=1.4m立方体)が=総トン数1トンの換算となり、1.4m立方の箱が仕切りのない真っ新な船の中に何個入るか?その個数が総トン数となるということです。
例えば飛鳥IIの総トン数は約5万トンなので、5万個入るということになります。想像しやすいですよね。
各港のクルーズ船誘致の取組みと活動
クルーズターミナルの建設、バース(係留)などの強化などのハード面から乗船客への「おもてなし活動」などを含むソフト面の両方を成立させていくには官民、地元協力が必要となっています。各港の取組み成功例のお話も聞くことができました。
函館港の取組み
韓国・中国発着がほとんどなく、中国人が爆買いをするということもないそうですが、2014年からクルーズ船の発着が急増し今では年間80%が外国籍クルーズ船ということです。
高校生による通訳ボランティア活動
2007年より地元の私立高英語科の生徒が通訳ボランティア活動を続けているそうです。
「通訳ボランティアが授業の一環で行われている」で平日の対応が可能。またすべてのクルーズ船に対応している訳ではなく、セレブリティクルーズやホーランドクルーズなど下船後フリーで動く傾向の多い欧米人を対象にしており「頑張りすぎない」ことも継続できている一因ということです。生徒の自主性も高まり、英語科クラスも各学年1クラスから2クラスに増加したそうです。
また学校を解放してお茶や書道など日本文化体験をしてもう取組みも進んでいるということです。
函館港湾の方のクルーズ乗船客「おもてなし」活動を聞いて感心してしまいました。乗船客や地元の学生にとって相乗効果がある取組みです。
地元高校生がサン・プリンセスに乗ってオーストラリアに留学し職業体験をしたという例もあるということです。
秋田港の取組み
このブログでも何度か記事にしましたが、秋田港は秋田クルーズ専用列車の運行を開始し、港からJR秋田駅までの乗客輸送に取組み秋田駅から新幹線、在来線などの利用で現地ツアーの範囲を拡大しつつあります。
関連記事:【news】秋田港クルーズ専用列車「あきたクルーズ号」を導入|秋田港旅客ターミナル新建設
クルーズ列車運行の早期実現の一因は?
2017年6月末のクルーズ列車導入記者発表からわずか1年未満で本運行が可能となりそのスピードが話題となりましたが、それについて秋田県建設部の方は「秋田県、秋田市、JR東日本の3社トップによる記者会見で運行時期も発表したことによりそこに合わせての準備となり早期実現となった。」と言われていました。
あきたクルーズ列車は貨物線を利用しているので走行速度がゆっくり運行しなければならないのですが、利用客によるとそのゆっくりした速度が好評のようだとのことです。また「到着時間が正確なので港へ帰ってくる時間が読める」という利点もあるようです。
クルーズターミナルの屋根付き歩行者用通路、防舷材・係船柱の整備などを経て10月24日、11月2日には13万トン級のMSCスプレンディダが初寄港となりました。
今後も超大型船の寄港を目指しクルーズ専用岸壁整備の計画がされています。
関連記事:【news】秋田港 22万トンクラス客船に対応可能なクルーズ専用岸壁整備計画|進む日本の他港の大型客船受け入れ対策
八代港の取組み
八代港は22万トン級のクルーズ船が接岸できる耐震強化岸壁を国が設備し、旅客ターミナルビルをロイヤル・カリビアン・クルーズが整備するという『官民』連携し、2020年3月までにクルーズターミナルの建設完成を目指しています。
2018クルーズポート・セミナーに参加した感想
一般者でも分かりやすい講義内容
2日間のクルーズポート・セミナーではこういったクルーズ船受け入れの港湾局の方のお話の他にも『クルーズ発展の歴史・クルーズ産業の現状と将来』『クルーズ観光』『クルーズ船入出港の安全について』など各専門家の方から貴重なお話を聞くことができました。
何度かクルーズ体験があり寄港・下船の経験があればより分かりやすい内容かと思いました。
港湾、船会社からの受け入れを含むクルーズに関する現状と課題、期待などのお話に直に聞くことはなかなかないのでいい機会で有意義な時間でした。
特に強く印象に残ったことは『クルーズ船出入港における安全について』。クルーズ船は軽く(貨物などに比べ)また風の影響を受けやすいので入港出港時のあらゆることを想定して操船安全性を検証し慎重にクルーズ船の受け入れをしなければならないということはただ乗船しているだけでは知り得なかった大事な内容でした。
クルーズに関する新しい情報が少なく残念
観光やクルーズの安全など専門的なことや現場のお話以外のクルーズの現状、政府の取組みなどは残念ながらほどんど知っている内容でした。このブログでも取り上げていますし、既にニュースリリースされていて目にする内容が多く新しい情報を得ることはなかったです。
乗船経験者を交えてのセミナーを希望
何度もリピート下船してもらえるよう「クルーズ乗船客への”おもてなし”」については各港で課題とされていることが多いのは分かりましたがクルーズ利用者の私が感じたのは「おもてなしをする側」と「おもてなしを受ける側」に温度差があるように思いましたし、内容がぼやけている印象を受けたところもありました。
幅広い年代の一般クルーズ乗船経験者をもっと交えて「要望」「期待」などを反映させてみてアレンジやオリジナリティを出していく方が早くまたクルーズ業界の変化にも対応できるのではないか?と思いました。
寄港地ので「求めていること」は日本人、外国客、年代別、初めて寄港地で下船する人、複数回の人…などでは全く異なると思います。実際私たちも事前の調べや下船経験で「あまり魅力を感じない」と感じた寄港地には下船しないこともあります。
各港にデメリットもあればそれがメリットだったりする発見もあり、近過ぎて見えないこともあるかもしれません。それはクルーズ乗船客側も同じ、ということをこのセミナーに参加して気づきました。
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