台風・ハリケーン・サイクロンがクルーズ船に与える影響|クルーズ船の全天候安全対策

ハリケーン・台風がクルーズに与える影響とは

「ハリケーン」「台風」「サイクロン」。これらの自然現象はクルーズにどのような影響をもたらすのでしょうか。またその時乗船していたらどうしたら良いのでしょうか。以下、海外のクルーズ専門のwebニュースサイトの記事を引用しており、日本発着のクルーズとは違いがあるかと思いますが、体験談と共に参考までにまとめています。

「ハリケーン」「台風」「サイクロン」の違いとは


(出典:ウェザーニュース「台風を知ろう」)
ハリケーン、台風、サイクロンは、上記の地域に存在する熱帯低気圧のうち、最大風速が約17m/s以上なら「台風」、「サイクロン」、最大風速が約33m/s以上なら「ハリケーン」と呼び方が異なります。

【参考】台風・ハリケーン・サイクロンの違い

台風・ハリケーン・サイクロンは以下の地域に存在する熱帯低気圧のうち最大風速が各数値を超えたもの。
【台風】東経180度より北西太平洋と南シナ海(最大風速約17m/s以上)
【ハリケーン】北大西洋,カリブ海,メキシコ湾および西経180度より東の北東太平洋(最大風速約33m/s以上)
【サイクロン】ベンガル湾,アラビア海などの北インド洋(最大風速約17m/s以上)
*それぞれの地域に存在する熱帯低気圧の強さによって分類している用語のひとつ
(引用:国土交通省 気象庁「台風について」)

【参考】台風・ハリケーン・サイクロンシーズン

【台風シーズン】
1991〜2020年の30年間の平均では、年間で約25個の台風が発生、約12個の台風が日本から300km以内に接近し、約3個が日本に上陸している。発生・接近・上陸とともに7月〜10月にかけて最多。
【ハリケーンシーズン】
ハリケーンは海洋条件が適切であれば、一年中いつでも発生する可能性がある。ただし、北大西洋盆地におけるいわゆる「ハリケーンシーズン」は6月1日〜11月30日まで続き、嵐の形成と強さのピークは8月中旬〜9月末頃。
【サイクロンシーズン】
北インド洋のサイクロンシーズンは4〜12月

ハリケーン,台風,サイクロンがクルーズに与える影響

全てのクルーズ会社の最優先事項は、乗船客、乗組員、船舶の安全と快適さです。全てのクルーズ会社では、気象学者や暴風雨予報士との緊密に連携し、最も正確なデータに基づいた最新の情報に基づいて予測を行っています。
ロイヤル・カリビアン、カーニバルクルーズ、アイダクルーズなどを含む多くの船舶にStarlinkのインターネットが導入され、個々の船舶が陸上の気象センターと緊密かつ即時に連絡を取り合い、最新の正確な気象情報を得ています。
クルーズ会社は、クルーズの運航の混乱を最小限に抑え、十分な安全を確保しハリケーン(以下、台風・サイクロンも含む)の進路から、乗船客や乗組員、船を守るために必要に応じてクルーズの変更、調整を行います。クルーズ会社がクルーズの変更を行う要因は様々で、嵐の状況も異なりますが、ハリケーンがクルーズに与える可能性がある典型的な影響は次のとおりです。

【旅程の変更】

寄港地や航路がハリケーンによってどのような影響を受けるかに応じて、旅程全体を変更、寄港地を変更することもあれば、寄港地せずに抜港することもあります。予定されていた寄港地が安全ではないと判断された場合、クルーズ会社は嵐が過ぎ去った後でも旅程の変更をし続けるケースもあります。
[このようなことが起こった場合]
寄港地でのエクスカーション料金は払い戻されます。船内クレジットの付与があるかもしれませんが、その時の状況によります。
みなと総合研究財団:外国船籍の日本クルーズ台風を避け、航路変更相次ぐ(2023.8.8)

【航海の短縮または延長】

クルーズ会社は、船が安全に航行できるよう嵐が過ぎ去るのを待っている間、必要に応じクルーズを短縮または延長する可能性があります。通常は寄港地ではなく、乗船港と下船港が影響を受ける場合にこの事態が発生し、港湾施設への被害の有無に応じて、わずか数時間である場合もあれば、数日程度かかる場合もあります。
[このようなことが起こった場合]
・クルーズが延長の場合:船内でのアクテビティや食事は引き続き提供され、クルーズが延長になった場合でも追加料金は発生しませんが、チップ、バー料金その他の追加料金は発生する可能性もあります。
・クルーズが短縮になった場合:通常、乗船客は乗船できなくなった時間の日割り計算による払い戻しが提供され、将来のクルーズへの船内クレジットが提供される場合もあります。

【乗船港または下船港の変更】

乗船港、または下船港が深刻な損傷を受け、安全ではなく数日間のクルーズ船の運航が不可能な場合、予定されていない別の港に戻る場合があります。
[このようなことが起こった場合]
クルーズ会社は通常、下船する乗船客が元の港に戻るか、クルーズ後に安全に帰宅ができるようにクルーズ後の旅行(帰宅)計画の支援を提供します。

【運航中止】

クルーズ会社は乗船客、乗務員の安全を確保するために必要に応じクルーズの全航海を中止します。
[このようなことが起こった場合]
クルーズ会社は可能な限り事前に乗船客に航行中止を通知し、旅行代金は全額返金されます。その際今後の予約に対する船内クレジットの提供がある可能性もあります。

クルーズ船の全天候安全対策

【天候に関するデータと専任気象学者】

クルーズ会社にとって安全は常に最優先事項です。その為、最新の気象に関するデータを保有し、船会社専任の気象学者を採用し嵐からクルーズ船を回避しています。

【クルーズ船の重さ】

クルーズ船は重鋼でできているため重量があり、これに乗船客や乗組員を加えると更に船は重くなります。これだけの重量があるため、船は荒れた海では重量がバランスサーとして機能します。最も荒れた海域では、船が傾くという最悪の事態がありそうでありません。造船所では船の建造中に重心と浮力をテストし、様々な種類の嵐のシュミレーションを行い、全てのクルーズ船が悪天候に対処できるように設計されています。

【クルーズ船の重心】

船の全重量が均等に分散されている場合は重心は中央にありますが、クルーズ船の場合機械、エンジン、燃料貯蔵庫、そのほかの物品は乗船客のエリア、客室、レストラン、劇場よりも重いのでクルーズ船の重心は船の下半分に位置します。悪天候によりクルーズ船が片側に押し流される可能性がありますが、全ての重機が甲板の下に配置されているため、重心が低く船は直立状態を維持します。これにより最小限の抵抗でスムーズに海中を移動することができます。

【クルーズ船の浮力】

水上のあらゆるものの浮力は密度に関係し、物体の密度が周囲の水よりも高い場合には沈んでしまいます。クルーズ船の沈没を防ぐのは、反対側の上向きの力と水圧です。上向きの力は押しのけた水とほぼ同じ重さになり、クルーズ船の沈没を防いでいます。

【クルーズ船のバランス】

クルーズ船にはバラストタンクが搭載されており、船の両側に水を汲み上げることができます。緊急時には、船のバランスを維持し、揺れを軽減し大波の抵抗に役立ちます。大型船舶には複数のバラストタンクが設置されています。
バラストタンクの搭載位置


(出典:明和開運株式会社:空船航海の危険性とバラストについて)

ハリケーンのリスクを最小限に抑える

【ハリケーンシーズンの旅程を避ける】

ハリケーンによる旅行計画の中断のリスクを最小限位抑える方法は、ハリケーンの活発な季節を外してクルーズ旅行を予約することです。ハリケーンシーズンが高まる夏にしかクルーズを計画できない場合は、嵐が少なく、弱い季節の早い時期の日程や影響が少ないクルーズを検討すると良いでしょう。

【旅行の予定を調整できるよう準備】

ハリケーンシーズンにクルーズ旅行を予定している人は、最新の気象情報をキャッチし、嵐がクルーズに影響を与えた場合に宿泊や交通機関の調整ができるように準備しておく必要があります。

台風により釜山港で3日間足止めになったクルーズ体験

過去にクルーズ途中で台風が九州を通過予定で、寄港地の韓国・釜山港で3日間足止めになった経験があります。

航海途中で台風による足止めになったクルーズ

【クルーズ船】コスタ・ネオロマンチカ
【期間】2017年9月13日〜18日(6日間)
【発着地】金沢港
【予定寄港地】境港・釜山・博多・舞鶴

【期間】2017年9月13日〜19日
【下船地】博多港で途中下船
クルーズ会社で負担してくれた費用
金沢〜東京JR料金(すでに予約していた分)/福岡港〜福岡空港までのタクシー料金/福岡空港〜羽田空港航空料金/羽田空港〜自宅までの電車・タクシー代。費用の精算は、クルーズ申し込みをした旅行代理店を通じて申請し、約1ヶ月後に入金。

東京から金沢港まで行き、コスタ・ネオロマンチカに乗船し、日本海クルーズを楽しむはずでした。最初の寄港地である境港では好天に恵まれ寄港時間を楽しみ、次の寄港地である釜山でもお天気は良好でした。その前後から九州付近を台風が直撃するので、翌日から釜山港に留まるというアナウンス。翌々日も同様で、釜山に停泊し、天候状況が許せば博多港へ向かうということで、船外へは降りれませんでした。その後、コスタクルーズから乗船客に今後のクルーズについての説明会が開かれ、乗船客の今後の選択肢として以下を提示されました。
1.釜山で下船して日本に帰る(自力手配/料金船会社持ち)
2.
次の寄港地「博多港」で自宅へ帰る(自力手配/料金船会社持ち)
3.3日間延長してこのクルーズを終了し金沢港に下船
(追加料金なし)

私達が選んだのは「次の寄港地「博多港」で自宅へ帰る」でした。釜山から帰ることも考えましたが、今後台風の影響で、釜山から(または仁川や金浦空港)から飛行機が飛ばない状況になると、外国の地で面倒なので予定より1日ずれてしまいますが、博多で下船、博多空港から帰ることに決めました。それからは、小雨が降る船のデッキの上で釜山クルーズターミナルから出ているフリーWi-Fiで博多-羽田間の航空券を取り、無事に帰京することができました。ただ、金沢港往復の手荷物宅配便を支払っていたのですが、福岡港で佐川急便の方が臨機応変に対応して下さり別料金もなく受け付けてくれました。

【体験談】この貴重な体験により我が家では「クルーズ旅行は台風シーズンを避ける」ことにしています。また、通信できるデバイス(PC,Pad,スマホなど)は毎クルーズ複数持参し、航空会社や鉄道の手配ができるよう万が一に備えています。着替えも1泊分多め、洗濯洗剤、多めの基礎化粧品なども用意しています。

 

悪天候がクルーズに与える影響

クルーズ船は、悪天候を含む一般的な天候に耐えられるように設計されており、また、クルーズの旅程も混乱を最小限に抑えて最高の天候を利用するように計画されていますが、それでも悪天候はクルーズにさまざまな影響を与える可能性があります。

【船内アクティビティの変更や中止】

海が荒れると、特定のショーの演者の安全が確保できず、スケジュールの変更や中止の可能性があります。プールの閉鎖、デッキチェアの撤収など船内のアクテビティにも影響があります。

【船酔い】

クルーズ中天候が悪化すると、船酔いが心配になります。船酔いしやすい場合は、過剰なアルコールや脂っこい食べ物、辛い食べ物を避けるなど吐き気を抑えるための自制に努めましょう。

【体験談】クルーズ船は揺れを回避するために航路を変更したり、台風などを避けるために港に停泊したりするので、乗船中に「立っていられない!」という程大荒れの海を航行した経験は今までありません。しかし、少し雨が降ったり、風が出ると微妙な揺れを感じることはあります。普段乗り物酔いをしない人でも、その時の体調や揺れ具合で船酔いすることもあるので、乗り物酔い薬は携帯して乗船した方がいいと思います。体験から、空腹時に酔いやすいので酔いそうな時は何か食べたり、船内を歩いたりジムで体を動かして気を紛らし、それでもダメなら酔い止めを飲んで寝てしまいます。

ハリケーンや台風シーズン外でも航行に影響がある嵐は発生します。実際に2018年3月に乗船したカリブ海クルーズでは嵐の影響で寄港地に着岸して、すぐ離岸した抜港経験もありました。クルーズ旅行を経験していくと「全旅程が穏やかで何事もない」ということは少なく、もはや乗船回数を重ねるごとに”予定外があっても当たり前”になってきます。自然には勝てないし、「大海原を旅行させてもらっている、感謝」くらいの気持ちだと色々あってもがっかりしないし、別の楽しいことにも出会えると思います。

 

 

 

 

 

 

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