横浜港クルーズ船寄港年1/3以上キャンセルに|クルーズ船感染防止についての提言
2020年横浜港クルーズ船寄港キャンセル93回分に
新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大の影響により、横浜港へのクルーズ船寄港数が2020年年間予定の3分の1以上のキャンセルを受けました。
今年2月「ダイヤモンド・プリンセス」での集団感染が発生、その後新型コロナウイルスの感染拡大により2月〜10月の間で93回の寄港キャンセルが決定しています。横浜市によると、1回の寄港で数億円規模の経済効果が期待されており、相次ぐ寄港キャンセルが観光産業へは長期化が懸念されているという。
(ニュース元:NHK web news2020.4.15)
新型コロナウイルスが収束したとしても、「クルーズ船における感染症対策」をクルーズ業界、クルーズ会社など明確に示さない限り、クルーズ旅行に人が戻らないと思います。安心して楽しめるクルーズ旅行になるよう期待をしたいと思います。
日本クルーズ&フェリー学会は以下のような提言を4月1日に発表しています。
クルーズ客船の新型コロナウイルス等感染防止についての提言
2020年1月下旬乗員乗客3700名のクルーズ客船で新型コロナウィルス感染が発生し、航海中船内で感染が広がりつつある横浜港に入港した。この新型コロナウィルスは潜伏期間が約1~2週間に及ぶとされ、その人数の隔離が陸上病院では不可能であったため、船内の船室内での隔離が2週間に及んだ。
同船に続き他のクルーズ客船でも同様な事象が生じ、世界の過半のクルーズ客船が運航中止に追い込まれるとともに、クルーズに対する懸念が内外で広がった。これは、最近定着したクルーズ旅行、それを支えるクルーズ産業、クルーズ船造船業にとって重大な事態である。当学会では、これに対応すべく、専門家と学会員を交えての勉強会を行い、この問題の改善に一定の方向性を見出だしたので以下提言したい。
なお、新型コロナウィルスは、接触感染、飛沫感染が主であるが、中国事例ではエアロゾル感染があるとされ、人の集まる空間の換気が求められている。また、ノロウィルスでは空気感染もあるとされる。ここでの提言はもっぱらエアロゾル感染と空気感染に対するものであることを付言したい。
1.現存船
A)船室が独立空調の場合(おおむね2010年以降の建造船で主流として採用されているファンコイルユニット方式)換気系統への配慮(要すれば、2項に準拠)の他、特段の対策を要しない。B)船室が独立空調でない場合
船内循環の排気リターンラインを遮断する方法のマニュアルを船内又は船社に常備すること。そして、船内に感染者が出た場合には、感染者を船内病院併設病室に隔離するとともに、すべての船室の排気リターンラインを船上で乗員が速やかに遮断すること。2.新造船または改造船で安全性の付加価値を与える場合
1)ファンコイルユニット方式で船室の空調を独立させる。
2)船室入り口に、空気調節のための前室を設け、その両側の扉を気密かつインターロック機能を持たせる。
3)圧力センサーを船室内に設ける(集中監視のため)。
そして、感染者発生時には吸排気口のHEPAフィルターを装備したバイパスラインを経由させる。
4)感染者が出た船室では、船室内の排気風量を増やすことにより陰圧とする。
5)非感染者の船室内では、船室内の新鮮空気量を増やすことにより陽圧とする。
6)感染者発生時の船内の給食は、前室内の棚での受け渡しとして、給食者と居室者の接触を避ける。
このレベルの客船は、今回のような大規模感染症蔓延期には、病院船としての用船も可能となる。3.上記の認証
1)上記の認証は、船級協会などの第3者によるnotationとして、適合船を旅行代理店、乗客に公表する。すなわち、感染症対策が1-Aのレベルか、1-Bか、2.かを公表し、乗船の目安としてその船の競争力に反映させる。(引用:日本クルーズ&フェリー学会『クルーズ客船の新型コロナウィルス等感染防止についての提言』)
ダイヤモンド・プリンセスの感染経緯、客室の「陰圧」「与圧」などに関する勉強会の資料→日本クルーズ&フェリー学会『客室の陰圧・与圧化についての勉強会報告』
いずれも専門的な内容ですが、ダイヤモンド・プリンセスの船内で足止めが進む中、船内の換気について乗船者がSNSなどで疑問を呈していたので非常に興味深い内容だと思います。